介護保険を、2014年から仕事で説明してきました。
その私が、自分の母にだけは説明できませんでした。
デイサービスを使ってみないかという話をしたくて、母のサナエちゃん(80歳)を地域包括支援センターに連れて行こうとしたときのことです。
「そんなの必要ないから、行かない」。
ひとことで終わりでした。
私は焦って、正しく説明しようとしました。
介護保険という制度があって、要支援と要介護があって、地域包括支援センターというのはこういう相談窓口で……。
正確に説明しようとすればするほど、母の顔は固くなっていきました。
最後は私のほうが感情的になってしまって。
仕事では毎日、初めてのご家族に落ち着いて説明できるのに、実の親には無理でした。
その日は、説明をやめました。
時間をおいて、日を改めて、また話しました。
それでもダメで、何度か仕切り直しました。
最終的に母がうなずいたのは、こんな一言です。
「健康維持のサービスを、今後使うかもしれないから。ちょっと行ってみようよ」
制度の説明は、ほとんどしていません。
むしろ、しなかったから伝わったんだと思います。
このとき身にしみたことがあります。
正確に説明しようとするほど、伝わらない。
制度の言葉は、それ自体が相手を身構えさせるんです。
「介護保険」も「要支援」も「地域包括支援センター」も、聞いた瞬間に「自分はまだそんな歳じゃない」という壁ができてしまう。
だからこの記事では、正確さよりも「伝わること」を優先して書きます。
制度の名前や細かい例外は、あえて後回しにしています。
タイトルに「超わかりやすく」と付けたのは、そういう理由です。
それともうひとつ。
一度で伝わらなくても、それが普通です。
プロでも自分の親には一度で伝わりませんでした。
時間をおいて、また話す。
その粘り方のほうが、正しい説明より効きます。
あらためまして、わらびもち(@warabimoti1229)です。
北海道釧路市のデイサービスで、介護職員と生活相談員を兼務しています。
2014年から介護の仕事をしていて、介護福祉士とケアマネジャーの資格があります。
2026年6月から、その母と同居して在宅介護をしています。
肩の力を抜いて、ゆっくり読んでみてください。
✓ 介護保険ってそもそも何?(仕組み)
✓ 誰が使える?(65歳以上・40〜64歳の特定疾病)
✓ 費用はどれくらい?(自己負担は原則1割)
✓ 申請から利用までの流れ(4ステップ)
✓ 使えるサービスと、よくある質問(Q&A)

まずはこの1枚で全体像をつかんでください。「へぇ、こんな感じか」となんとなく分かればOKです。細かいところは本文でゆっくり説明していきますね。
介護保険って、そもそも何?
ひとことで言うと、「介護が必要になったとき、安く助けを借りられる仕組み」です。
たとえば、お風呂に一人で入るのが難しくなったとき。ヘルパーさんに手伝ってもらったり、施設に通って入浴させてもらったりできます。本来ならお金がかかるサービスですが、介護保険を使えば、その費用のほとんどを国などが負担してくれるんです。
なぜそんなことができるのか。それは、40歳以上のみんなが少しずつお金(保険料)を出し合っているからです。「困ったときはお互いさま」で支え合う、そんな仕組みです。
イメージは医療保険と同じです。病院に行くとき、健康保険証を出すと支払いが安くなりますよね。普段からお金を出し合っておいて、必要なときに安く使える。それの「介護版」だと思ってください。
誰が使えるの?

基本は65歳以上で、介護が必要だと認められた人です。
40〜64歳の人も、特定の病気が原因で介護が必要になった場合は使えます。ただ、まずは「65歳以上の人が使うもの」と覚えておけば大丈夫です。
ここでいう「特定の病気」は、国が定めた16種類の病気(特定疾病)のことです。たとえば、次のようなものがあります。
- がん(医師が回復の見込みがないと判断した状態)
- 関節リウマチ
- 初老期における認知症(若くして発症する認知症)
- 脳血管疾患(脳梗塞・脳出血など)
- パーキンソン病 など、ぜんぶで16種類
「自分(家族)の病気は対象かな?」と気になる場合は、上の厚生労働省のページで全16種類を確認できます。判断にまよったら、市区町村の窓口に聞くのが確実です。
お金はどれくらいかかるの?
サービスを使ったときに払うのは、かかった費用の1割だけ(収入が多い人は2〜3割)。残りは介護保険がまかなってくれます。
たとえば1万円分のサービスを使っても、自分が払うのは1,000円ほど。しかも、1か月に払う金額が高くなりすぎないよう、上限も決められています(高額介護サービス費という仕組みです)。使いすぎて家計が大変…とならないように守られているので、安心してください。
ここだけ覚えればOK!「使った分の1割ちょっとで済む」「払いすぎないよう上限もある」。お金の心配で利用をためらう必要はありませんよ。
なお、自己負担の割合(1〜3割)は所得によって決まり、毎年7月に見直されます。さらに、国では2割負担となる人の範囲を広げる議論も進められています。最新の負担割合や上限額は、お住まいの市区町村の窓口や厚生労働省の資料で確認してくださいね。
制度の正確な内容は、厚生労働省の「介護保険制度の概要」でも確認できます。
使いたいときは、どうすればいいの?

やることは、大きく3つだけです。
① 市役所に「使いたい」と伝える
お住まいの市区町村の窓口(介護保険の担当課)で、「介護保険を使いたい」と申請します。
② どれくらい介護が必要か調べてもらう
調査員が家に来て、生活の様子を聞き取ります。その結果をもとに「このくらい手助けが必要ですね」という度合い(要支援・要介護)が決まります。
③ 計画を立てて、利用スタート
専門の相談員(ケアマネジャー)が、どんなサービスをどう使うか一緒に計画してくれます。あとはその計画に沿って、デイサービスやヘルパーさんの利用が始まります。
「何から始めればいいの?」という方は、お住まいの地域にある「地域包括支援センター」に相談するのが一番です。介護のなんでも相談窓口で、無料で話を聞いてもらえます。私の職場でも、ここから始めた方がたくさんいますよ。
申請から利用開始までの具体的な流れは、こちらの記事でさらにくわしく解説しています。
→ デイサービスを利用するには?初心者向けに利用までの流れをやさしく解説
わたしの地元・釧路の相談先と手続き窓口はこちらです。「何から始めれば…」というときは、まず地域包括支援センターに相談するのが一番です。
まず相談したいとき(地域包括支援センター)
・釧路市 地域包括支援センター(一覧)
・釧路町 高齢者の相談窓口(地域包括支援センター)
介護保険の手続き・サービス
・釧路市「介護(介護保険)」のページ
・釧路町「介護サービスの利用手続き」のページ
どんなサービスが使えるの?

いろいろありますが、代表的なものはこの3つです。
- 家に来てもらう:ヘルパーさんが来て、食事やお風呂、掃除などを手伝ってくれる
- 通って利用する:施設に通って、食事・入浴・体操などを楽しむ(これが「デイサービス」です)
- 泊まる・入る:短期間泊まったり、施設に入って暮らしたり
私が働いているのも、このうちの「デイサービス」です。日中通っていただいて、入浴や食事、楽しい時間を過ごしてもらう場所です。
デイサービスでどんな1日を過ごすのかは、こちらの記事でくわしく紹介しています。
→ デイサービスってどんなところ?仕事内容・1日の流れを介護職が解説
デイサービスの費用がどれくらいかかるのかは、こちらの記事でくわしく書いています。
→ デイサービスの費用はいくら?1割負担の月額目安を現役の介護職が解説
よくある質問(Q&A)
Q. 申請してから使えるまで、どれくらいかかりますか?
申請から認定結果が届くまでは、原則30日以内が目安です(要介護認定という手続きです)。結果が出る前でも、急ぎのときはサービスを使い始められる場合があります。「待っていられない」というときは、申請の窓口で遠慮なく相談してください。
Q. 「要支援」と「要介護」は何がちがうの?
ざっくり言うと、要支援(1〜2)は「今は軽いけれど、悪化を防ぐために少し支えが必要」な状態、要介護(1〜5)は「日常生活に手助けが必要」な状態です。数字が大きいほど、より手厚いサービスが使えると考えてください。
Q. 親が遠くに住んでいる場合は?
申請するのは、親御さんが住んでいる市区町村です。まずは親御さんの地域の地域包括支援センターに電話で相談するのがスムーズです。離れて暮らしていても、電話のやりとりから始められますよ。
Q. 収入が少なくて、費用が払えるか不安です…
自己負担は原則1割で、1か月の上限も決まっています(高額介護サービス費)。さらに、収入が少ない方には食費や部屋代の負担を軽くする仕組み(負担限度額認定)もあります。「お金がないから無理」とあきらめず、まずは窓口で相談してみてください。
Q&Aで解決しないことも、窓口や地域包括支援センターなら一つずつ答えてくれます。「こんなこと聞いていいのかな」と思うことほど、実はみんなが聞いていることなので大丈夫ですよ。
まとめ:まずは相談から
- 介護保険=介護が必要なとき、安く助けを借りられる仕組み
- 基本は65歳以上の人が使える
- 支払いは原則1割でOK。上限もあるので安心
- 使いたいときは、市役所か地域包括支援センターに相談
むずかしそうに見える介護保険ですが、「安く助けを借りられる仕組み」とわかれば、ぐっと身近に感じられたのではないでしょうか。
わからないことだらけでも大丈夫。地域包括支援センターや市役所の窓口は、まさにそのための相談先です。「何から聞けばいいか分からない」状態のままで、気軽に頼ってくださいね。
わからないことがあれば一人で悩まず、まずは相談してみてください。それが一番の近道です。このブログでは、介護の現場からみなさんの不安が軽くなる情報を発信していきます。
「親の介護、そろそろかも」と感じている方は、準備の始め方をまとめたこちらの記事も参考になります。
→ 親の介護はいつから準備する?「始め時」のサインと準備リスト

もっと詳しく知りたい方へ
公式の正確な情報は、こちらで確認できます。
※保険料や負担割合などの細かい金額・条件は、お住まいの市区町村や状況によって変わります。正確なことは市区町村の窓口で確認してくださいね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは、また。
制度の話はここまでですが、そもそも「親の様子が気になる」という段階の方は、お盆の帰省で気づきたい親の変化も読んでみてください。私が母の異変に気づけなかったときの話を書いています。


