「終わったら六花亭でお茶しよう」母を物忘れ外来へ連れ出した日|認知症かもと思ったあとの動き方

病院へ向かう道を、母と並んで歩くイラスト。「終わったら お茶していこう」と声をかけている 親の介護

「終わったら、六花亭でお茶でもしよう」

母を病院へ連れ出すとき、私が最後に足した一言です。

この一言がなかったら、あの日は家を出られてなかったと思います。ほんとに。

病院より、お菓子。強い☕

💬 わらびもち
こんにちは、わらびもちです。北海道釧路市でデイサービスの生活相談員をしています。介護福祉士とケアマネジャーの資格を持ち、現場に立って12年以上になりました。2026年6月からは、79歳の母と同居しています。今日は「認知症かもしれない」と思ったあと、実際にどう動いたかという話です。

親の様子が、どうも前と違う。

そこまでは、わりとみんな気づくんです。

問題はその先です。気づいたのに、何からやればいいか分からない。そうこうしてるうちに数か月経ってしまう。現場にいると、これが本当に多い。

なので今日は、「気づいたあと、どう動くか」の話だけします。

気づき方のほうは、こっちに書きました。→ お盆の帰省で気づきたい親の変化

「認知症かもしれない」と相談されて、私が最初に聞くこと

仕事柄、ご家族から「うちの親、認知症じゃないでしょうか」と相談されることがあります。

そういうとき、私はまず慰めません。否定もしません。

「どうしてそう思ったんですか」と、根拠を聞くことです。

冷たく聞こえますよね。ごめんなさい。でも、ここがいちばん大事なんです。

具体的には、こういうことを一つずつ聞いていきます。

  • 物の周りの変化(置き場所、増え方、減り方)
  • 発言や行動の変化(前は言わなかったこと、しなかったこと)
  • 日常生活の中での、ちょっとした違和感

「なんとなく変」を、「いつ・どこで・何が」に置き換えていく。それだけです。

これをやっておくと、病院でも窓口でも、話が驚くほど早く進みます。逆にここがぼんやりしたままだと、こっち側も動きようがないんですよね。

……つまり最初にやるべきは、相談じゃなくてメモ。地味だなぁ。

いちばん高い壁は、本人じゃなくて家族の気持ちだった

ここからは、あんまり言われない話を。

現場で見ていて思うんですが、ご家族って、どうしても親の変化を受け入れたくないんです。

「おかしいけど、こんなはずはない」

「あの母が。あの父が」

「まだ大丈夫」

この三つ、本当によく聞きます。判断が甘いわけでも、愛情がないわけでもない。むしろ逆です。大事に思っているからこそ、目の前の変化にフィルターがかかる。

私だってそうでした。

12年この仕事をやって、よそのご家族には「早めに動きましょう」なんて言ってきた人間が、自分の母のこととなると一拍遅れる。

……プロも、身内には素人。えらそうなこと言えません。

だからもし、いま「気のせいかも」と自分に言い聞かせている人がいても、それは弱さじゃないです。ただ、そういうフィルターがかかってるんだな、とだけ頭の隅に置いておいてください。

ひとつだけ、先に知っておいてほしいこと

これは、はっきり言っておきたいことです。

「認知症は完治する」と思っている方が、意外といらっしゃいます。

病院に行けば治る。薬を飲めば元に戻る。そう信じて受診して、そうじゃないと知って、そこでガクッと落ち込んでしまう。

いまできるのは進行を和らげること——そこを知らないまま病院に行ってしまう。これが、けっこうあるんです。

国の考え方や取り組みは、厚生労働省の認知症施策のページにまとまっています。行く前に5分だけでも見ておくと、心の準備がぜんぜん違います。

期待の角度を、間違えないでほしいんです。

……そこがズレたままだと、あとでしんどくなるのは家族のほう。

💬 わらびもち
希望がないという話ではないですよ。早く動けるほど、使える制度も、選べる暮らし方も増える。だから「治す」ではなく「これからどう暮らすか」に頭を切り替える。私はそう考えています。

最初の相談先は、病院じゃなくて地域包括支援センター

ここからは制度の話なので、少し丁寧にいきますね。

まだ介護保険を使っていないご家庭なら、最初の相談先は地域包括支援センターです。

高齢者の相談を受ける公的な窓口で、市区町村ごとに担当エリアが決まっています。相談は無料です。仕組みについては厚生労働省の地域包括ケアシステムのページが分かりやすいです。

そして、すでに介護保険サービスを利用しているなら、担当のケアマネジャーへ

もう関係ができている分、いちばん話が早いです。遠慮はまったく要りません。そのための担当なので。

近くにどんな窓口や事業所があるか分からないときは、介護サービス情報公表システムで地域から探せます。

「まだ何も決まってないのに相談していいのかな」と迷う方が多いんですが、決まってない段階こそ来てほしいです。ほんとに。むしろ暇なときのほうが丁寧に聞けます(笑)

そもそも介護保険ってどういう仕組み? という方は、こっちを先にどうぞ。→ 介護保険とは?【超わかりやすく解説】

受診を、どう切り出したか

で、ここからが本題です。

正面から「認知症かもしれないから病院に行こう」。これで素直にうなずいてくれる親、まあ、いません😂 受診拒否って本当に難しいんです。

私が母に使ったのは、この言い方でした。

  • 「うちは大丈夫だと思うけど、年齢も年齢だし、先々不安だから念のため見てもらおう」
  • 「大丈夫だったら、それはそれで安心でしょ」
受診の切り出し方を比べた2コマ。「病院に行こう」では渋る母が、「終わったらお茶していこう」で乗り気になる
正面から言うと渋られる。ひとこと足すだけで、返事が変わりました

コツがあるとすれば、疑いを主語にしないことかなと思います。

「あなたが心配だ」じゃなくて、「私が不安だから付き合って」。理由は年齢にしておく。そして、何もなくても損はしない形にしておく。

それでも母は、乗り気ではありませんでした。

ただ、あとになって知ったことがあります。

母は義母のエミちゃんに、「私、変になったのかい?」と相談していたそうです。

それをエミちゃんが妻に話して、妻から私に伝わってきました。

いちばん気にしていたのは、本人でした。

渋っていたのは、どうでもよかったからじゃない。怖かったからです。

でも私は、その話を聞いたことを母には言いませんでした。知らない体のまま過ごしました。

言ってしまえば、母とエミちゃんの関係が狂うかもしれない。これから同居していく相手です。

家族とはいえ、人が何人も間に入ると、伝言ゲームはうまくいかないことのほうが多い。変な誤解が生まれると、あとが大変ですから。

なので、経過観察。

仕事で毎日使ってる言葉を、まさか自分の家で使うとは思いませんでした(笑)

そこで最後に足したのが、冒頭の一言です。

「終わったら六花亭でお茶でもしよう」

母は昔から、喫茶店やカフェでお茶をするのが大好きな人なんです。

だからその日の目的は、病院じゃない。お茶です。病院はお茶までの途中にある、ちょっとした寄り道。そういうことにしてしまう。

結果、母は家を出てくれました。あっさり。

そして受診が終わったあと、予告どおり六花亭へ🍰

お茶したあとの母は、すっかりご満悦。

病院のことは、もう話題にも出ませんでした。完全に、お茶がメインイベント(笑)

受診のあとの喫茶店。母はぜんざい、私はコーヒーで一息ついているイラスト
母はぜんざい、私はコーヒー。うちの定番です

……あの顔を見て、こっちが救われた。まあ、それでいいか。

だますのとは違います。その日を、親にとって嫌な記憶にしないためです。次に「また行こう」と言えるかどうかは、この一回の後味で決まりますから。

💬 わらびもち
ご褒美は、なんでもいいんです。おそば、回転寿司、道の駅、好きな店のパン🍞 親御さんが「それなら行くか」と思うものを、受診の後ろに置いてあげてください。ちなみにうちは、お菓子には勝てません。

かかりつけ医ではなく、物忘れ外来を選んだ理由

母は物忘れが気になっていたので、私が選んだのは物忘れ外来でした。

探し方、めちゃくちゃ普通です。ネットで検索して、電話。以上(笑)

ケアマネの資格を持ってても、やることは皆さんと同じでした。

かかりつけの内科もありました。それでもそちらに行かなかった理由は、二つあります。

ひとつは、介護保険の申請には要介護認定の手続きがあり、その中で「主治医の意見書」が必要になるからです。だったら認知症に関連する病院で診てもらったほうが、申請がスムーズかな、と考えました。

もうひとつは、単純に自分自身が、専門的な医療機関で診てもらったほうがいいと思ったからです。

ここは正直に書いておきますね。

この判断は、制度上のルールではありません。「専門の医師でないと意見書が書けない」といった決まりがあるわけではなく、私が勝手にそう思っただけです。

長く診てもらっているかかりつけ医だからこそ、いつもとの違いに気づける。そういう考え方もあります。どっちが正解ということでもないです。

……専門職の顔をしていても、自分の親のことは手探り。こんなもんです。

受診が終わってから、地域包括支援センターへ

受診が終わったあと、私は地域包括支援センターに行きました。

そこで、介護保険の申請をしました。

もっと先延ばしにもできたはずですが、そうしませんでした。

理由は単純です。時間を置くほど「まあ、もう少し様子を見てからでも」という気持ちが戻ってくるのを、仕事で何度も見てきたからです。

認定には手続きの時間がかかります。申請した瞬間に何かが始まるわけではない。だからこそ、動ける気持ちがあるうちに動いておく。

申請から認定までに何が起きるのかは、こちらで細かく書きました。→ 要介護認定の申請方法【完全ガイド】

……あの日の自分だけは、ちょっとほめてあげたい。

「まだ大丈夫」と思っている、あなたへ

長くなったので、まとめます。

  • まず「そう思った根拠」を、具体的に書き出す
  • 受け入れたくない気持ちは、誰にでもかかるバイアスだと知っておく
  • 期待の角度を間違えない。できるのは、進行を和らげること
  • 最初の相談は地域包括支援センターへ。利用中ならケアマネジャーへ
  • 受診は「念のため」と「そのあとのお楽しみ」をセットで誘う
  • 動ける気持ちがあるうちに、申請まで進めておく

9月は認知症月間です。2026年は、9月21日が敬老の日と認知症の日で重なります。

年に一度くらい、親のこれからを考える日があってもいいですよね。……といっても、うちは結局お茶して終わりそうですが(笑)

なお、私は介護の専門職ではありますが、医師ではありません。ここに書いたのは、あくまで一人の家族としての動き方です。実際の診断や治療のことは、必ず医療機関で相談してください。判断に迷ったときは、地域包括支援センターに「病院のことで迷っている」と伝えるだけでも、話は前に進みます。

気づいた人が、動ける人だと思います。

まずは、お茶に誘うところから☕

「仕事では説明できるのに、自分の親のことは動けない」。この感覚については、ブログを始めたときにも書きました。→ 介護の仕事と家族の介護、両方をやってみてわかったこと

ちなみに、この記事に出てくる義母のエミちゃんと、母サナエちゃんの対比はこちらの記事でも書きました。→ 「何もいらない」義母と「しまむらに行きたい」実母|母の日のリアル

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