9月21日は「認知症の日」です。
そして、9月まるごとが「認知症月間」。
なんとなくニュースで見たことはあっても、「で、それが自分に何の関係が?」という感じではないでしょうか。
実はこれ、法律で決まっていることなんです。
そして私は、認知症をとても身近なものだと思っています。
うちの母も、将来的にそうなるかもしれない。
実際、一時期は体が目に見えて動かなくなったような時期がありましたし、老人性うつのように見えるときもありました。
でも、生活の環境が変わって、介護サービスを使うようになって、状況は良くなりました。
今は週に一回のデイサービスと、家庭菜園に夢中です。

9月21日は「認知症の日」だと、法律に書いてあります
で、本当に条文に書いてあります。
根拠になっているのは、共生社会の実現を推進するための認知症基本法(令和5年法律第65号)。
公布が令和5年6月16日、施行は令和6年1月1日。まだできたばかりの法律です。
その第9条。
国民の間に広く認知症についての関心と理解を深めるため、認知症の日及び認知症月間を設ける。
2 認知症の日は9月21日とし、認知症月間は同月1日から同月30日までとする。
この条文には続きがあって、国と自治体に対し、認知症の日にふさわしい事業を実施するよう努めること、認知症月間にふさわしい行事が実施されるよう奨励すること、まで定めています。
毎年9月になると講座や交流会が増えるのは、なんとなくではなくて、法律が「やりなさい」と言っているからなんですね。
厚生労働省の令和8年度の認知症の日・認知症月間のページによると、今年は令和8年8月21日時点で、全国で約8,000件のイベントが予定されているそうです。
8,000件。多いです、ほんとに。
なぜ9月21日なのか|世界アルツハイマーデーとのつながり
じゃあ、なぜ21日なのか。
先に世界のほうで決まっていたから、というのが答えです。
1994年(平成6年)、国際アルツハイマー病協会(ADI)が世界保健機関(WHO)と共同で、毎年9月21日を「世界アルツハイマーデー」と定めました。
日本の認知症基本法は、そこに合わせる形で「認知症の日」を9月21日にしています。
つまり、日本だけの記念日じゃない。30年以上前から、世界中が同じ日に同じことを考えている日です。
(この経緯は、釧路市が配っているチラシにも書かれています)
数字で見ると|高齢者の3.6人に1人
国が令和6年12月に閣議決定した認知症施策推進基本計画の前文に、こんな数字が載っています。
令和4年(2022年)の時点で、
- 認知症の高齢者は、約443万人
- 軽度認知障害(MCI)の人は、約559万人
合わせると、1,000万人を超えます。
高齢者のおよそ3.6人に1人、という割合です。
そして令和22年(2040年)には合わせて約1,200万人(認知症 約584万人、MCI 約613万人)になる見込み。このときは約3.3人に1人。
若年性認知症も、令和4年で約3.6万人。18〜64歳の10万人あたり約50.9人という推計です。高齢者だけの話ではありません。
MCI(軽度認知障害)って何ですか
しれっと出てきた「MCI」。計画の注釈には、こう書かれています。
記憶障害などの軽度の認知機能の障害が認められるが、日常生活にはあまり支障を来さない程度であるため、認知症とは診断されない状態
ざっくり言うと「ちょっと気になるけど、暮らしはまわっている」段階。認知症と診断された状態ではありません。
なので、さっきの1,000万人は「1,000万人が認知症」という意味ではないです。ここは誤解されやすいので、はっきり書いておきます。
(当たり前ですが、私は医師ではありません。診断の話は、必ずお医者さんに)
国が言い出した「新しい認知症観」を、現場の言葉に置き換えてみる
今年、いちばん語りたかったのがこの言葉です。
さっきの基本計画の前文に、「新しい認知症観」という考え方が出てきます。
原文はこうです。
「新しい認知症観」とは、認知症になったら何もできなくなるのではなく、認知症になってからも、一人一人が個人としてできること・やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間等とつながりながら、希望を持って自分らしく暮らし続けることができるという考え方である。
そして、その少し前にはこうも書かれています。
認知症になると何も分からなくなり、できなくなるという考え方が現在も根強く残っており、認知症になることを受け入れることが難しい状況がある。
これ、行政の文書としてはかなり珍しいと思っています。
「世間の思い込みが、本人と家族を苦しめている」と、正面から書いているので。
しかも、これは飾りの一文ではありません。
第1期の基本計画には重点目標が4つあって、その重点目標1が、そのまま「国民一人一人が『新しい認知症観』を理解していること」なんです。
一番目。国が今いちばん変えたいのは、制度でも施設の数でもなく、わたしたちの頭の中だ、ということですよね。
と、ここまで書いておいてなんですが。
正直に言うと、私はこの言葉に少し引っかかってもいます。
曖昧だなと思うし、きれいごとかな、とも思う。
介護職員と生活相談員を兼務している立場から言うと、認知症のある方に何かをしていただくのって、実際すごく大変なんです。
ご本人の気持ちやコンディションが乗らない日は、無理には進みません。
というより、進めてはいけない。
……言いたいことは、すごく分かるんですけど。
そのうえで。
じゃあこの言葉はいらないのかというと、そうでもないと思っています。
「新しい認知症観」を、私の言葉に置き換えるとこうなります。
何歳からでも遅くない。
物事を始めるのに、遅いということはない。
これなら、分かる。
シルバーチャレンジ、です。
オールドチャレンジでもいい。
やったもん勝ちだと思っています、ほんとに。
うちの母が、まさにそうでした。
同居を始めて1か月で、「家にある畑で、野菜を作りたいんだよね」と言い出して。
本当に草を取って、畑を耕し始めました。
あのとき私が「危ないからやめたら」と先回りしていたら、いまの姿はなかったと思います。
そのときのことは、別の記事に書きました。

そして今年の畑が、これです。



できること・やりたいことがある、というのは、たぶんこういうことです。
デイサービスで見てきた「できること」の話
これはこの人にかなわない、と思うこと
デイで働いていると、「これはこの人にかなわないな」と思う瞬間があります。
たとえば、裁縫。
それから、麻雀。
どちらも、私はかないません。
なかでも忘れられないのが、針に糸を通す場面です。
90代の方が、いとも簡単に通してしまう。
こちらが「あっ」と言う間もないくらいの速さで。
体が覚えていることって、あるんだなと思いました。
家と、デイとで顔がちがう
ご家族から、こう言われることがあります。
「家では寝てばかりなんですけど」
でもデイでは、おしゃべりをしていたり、歌を歌っていたりする。
その話をすると、ご家族はたいてい驚かれます。
家で見えている姿が、その人の全部ではない。
考えてみたら、それって私たちも同じですよね。
教わっているのは、こちらのほうでした
もうひとつ、書いておきたいことがあります。
私が利用者さんから頂いた、言葉たちのことです。
- 小さいことを気にしない
- いつも笑っていなさい
- 嫌な人とは関わらない方がいい
- 心を穏やかにしなさい
どれも、日々の会話の中で言われたことです。
そして今、私自身の教訓になっています。
支える側のつもりでいたのに、教わっているのはこちらのほうでした。
法律ができて、家族が実際に使えるようになったもの
母のときもそうでしたが、こういう変化は、家族だけではなかなか起こせません。
利用者さんとの関わり、仕事、いろんな職種の方、それに地域との連携。
そういうものが、やっぱり要るんだと思っています。
理念の話が続いたので、ここからは実物の話。
基本計画の「相談体制の整備等」には、家族が実際に使える資源が並んでいます。
相談できる場所は、1か所じゃない
計画が相談先として挙げているのは、こんなところです。
- 地域包括支援センター
- 認知症疾患医療センターを含む専門医療機関
- 居宅介護支援事業所(ケアマネさんのいるところ)
- 小規模多機能型居宅介護事業所
- 認知症高齢者グループホーム
さらに、企業の中の相談体制まで整備すると書かれています。働きながら介護する人が増えているからですね。
もうひとつ、「おっ」と思った部分を。認知症の人とその家族への一体的支援事業の定義です。
認知症の人とその家族が、話合いに基づく活動等を通じて、その思いの共有や他の家族からの気付きを促し、認知症の人とその家族のお互いの思いのずれや葛藤を調整し再構築を図るために、認知症の人とその家族を一体的に支援する事業
「思いのずれや葛藤」。国の計画に、この言葉が入っているんです。
家族の中で起きていることを、分かって書いている人がいる。それだけで、少し救われる気がします。
認知症カフェ・地域カフェ
計画には、認知症カフェの推進も書かれています。
釧路市の場合は「認知症の人やご家族、地域住民の方など誰でも自由に参加できる交流の場」として、令和8年8月現在、15か所。
誰でも参加できます。家族じゃなくても、当事者じゃなくてもいい。
場所と日程は、最寄りの地域包括支援センターで教えてもらえます。
認知症サポーター
認知症の正しい知識を持って、地域でできる範囲の手助けをする人のこと。養成講座を受ければ誰でもなれます。
資格でも仕事でもないので、身構えなくて大丈夫です。
釧路市では、ちょうど9月16日(水)10:30〜12:00に中央図書館7階で養成講座があります(要申込。中部南地域包括支援センター 0154-24-1102)。
認知症初期集中支援チーム
専門職が自宅に来てくれる仕組みです。認知症の専門医(サポート医)と、医療・介護・福祉の専門職のチーム。
釧路市は平成29年度から設置しています。
対象は、40歳以上の釧路市民で、自宅で生活していて、認知症の疑いや症状などで困っている方。65歳以上ではなく、40歳以上です。
窓口は地域包括支援センターにいる認知症地域支援推進員です。
釧路市の地域包括支援センター(7か所)
結局どこに電話すればいいのか。住んでいる地区の、地域包括支援センターです。
| センター名 | 担当地区 | 住所 | 電話 |
|---|---|---|---|
| 西部 | 鳥取、大楽毛地区(昭和・鶴野などを含む) | 釧路市昭和190番地4462(老健くしろ内) | 0154-55-2666 |
| 中部北 | 愛国地区(美原・芦野・文苑などを含む) | 釧路市文苑4丁目65番2号 | 0154-36-1233 |
| 中部南 | 鉄北、橋北地区 | 釧路市堀川町8番43号 | 0154-24-1102 |
| 東部北 | 橋南地区(春採5・7・8丁目の一部) | 釧路市鶴ヶ岱1丁目10番46号 | 0154-42-0600 |
| 東部南 | 春採地区(興津・桜ヶ岡・白樺・益浦などを含む) | 釧路市春採4丁目10番15号 | 0154-42-8222 |
| 阿寒 | 阿寒町全域 | 阿寒町中央1丁目4番1号(阿寒行政センター内) | 0154-66-1234 |
| 音別 | 音別町全域 | 音別町中園2丁目119番地1 | 01547-9-5252 |
開いているのは月曜〜金曜の9時〜17時(土日祝と年末年始はお休み)。ただし緊急のときは電話で24時間対応してくれます。
相談できるのは介護予防、生活支援、権利擁護、成年後見制度など。認知症の相談も、もちろんここ。
釧路町にお住まいの方
釧路町(釧路郡釧路町)は、町の地域包括支援センターが窓口です。
- 釧路町地域包括支援センター … 0154-40-5217(直通)
- 同ブランチ(遠矢コレクティブセンター内) … 0154-40-5081
社会福祉士・保健師・主任ケアマネジャーが対応してくれて、訪問しての相談もできます。町のページには、相談の例として「もの忘れが増え不安、心配」が挙がっています。
そしてブランチのほうは、24時間365日。夜中に不安になる家族にとって、これはかなり大きいと思います。
※ 釧路町の公式サイトは「http://」で始まるアドレスです。ブラウザによっては「保護されていない通信」と出ますが、町の公式ページで間違いありません。気になる方は、上の電話番号だけ控えてもらえれば大丈夫です。
釧路市が今月やっていること|幣舞橋がオレンジに光っています
さて、地元の話。
幣舞橋が、オレンジ色に光っています。
オレンジは、認知症のシンボルカラー。9月1日(火)から21日(月)まで、認知症月間に合わせたライトアップです(9月12日・13日を除く)。
チラシの会場欄には「釧路フィッシャーマンズワーフMOO EGG」とあります。
正直に書きますが、私はこれを知りませんでした。
うちは釧路町のほうなので、幣舞橋のあたりには、あまり行かなくて。
今年は興味があるので、見に行ってみようと思っています。
釣具センターに行くついでか、どんぱくのときにでも——と考えていたのですが。
どんぱくの2日間(9月12日・13日)は、ちょうど消灯です。
あぶないところでした。同じことを考えている方は、気をつけてください。
そのほか、令和8年度のイベントはこんな日程です。
| 日時 | 名称 | 会場 | 申込 |
|---|---|---|---|
| 9月16日(水) 10:30〜12:00 | 認知症サポーター養成講座 | 中央図書館7階 多目的ホール | 要(中部南地域包括支援センター 0154-24-1102) |
| 9月16日(水) 13:30〜15:30 | オレンジ交流会 | 中央図書館7階 多目的ホール | 不要 |
| 10月16日(金) 10:00〜11:30 | 認知症サポーター スキルアップ講座(受講済みの方向け) | ケアコートひまわり | 要(0154-24-1102) |
| 10月24日(土) 13:00〜15:00 | 第11回 釧路市認知症講習会「ほっとけない!!認知症」 | まなぼっと幣舞2階 多目的ホール | 不要 |
| 11月7日(土) 10:00〜12:00 | 第7回 若年性認知症の人と家族の集い | 市役所防災庁舎5階 会議室 | 不要 |
問い合わせは、釧路市役所 介護高齢課 高齢福祉係(0154-23-5185)。
なかでも見てほしいのが、9月16日のオレンジ交流会。介護の悩みを話したり、経験を交換したりする場で、申し込みがいりません。
しかも「認知症の本人の参加も大歓迎」と書かれています。家族だけで行かなくてもいい、ということですよね。
さっきの「新しい認知症観」が、いちばん分かりやすい形になっているのが、たぶんこの一行だと思います。
10月24日の講習会も、終わったあと15時30分まで相談コーナーが出ます。電話はちょっと苦手、という方はこういう場のほうが早いかもしれません。
※ この日程は、釧路市「9月は認知症月間です!」のページのチラシPDFから書き起こしました。中身が画像のPDFなので、検索しても文字では出てきません。おでかけ前に、市のページで最新情報のご確認を。
今月、ひとつだけやるとしたら
長くなりました。最後にひとつだけ。
無理をしない。
これが、この記事でいちばん言いたいことかもしれません。
今年の認知症月間のスローガンは、これだそうです。
日々、自分らしく生きていく。つづけていこう、希望の道を。
標語としてはよくある感じに見えるかもしれません。
でも「新しい認知症観」を読んだあとだと、言いたいことがはっきりします。認知症になってからの日々を、無かったことにしない。そういう話なので。
で、今月ひとつだけやるとしたら。私からの提案は、この3つのうちどれかです。
- 幣舞橋を見に行く(9月21日まで。オレンジです。無料です)
- 地域包括支援センターに電話してみる(相談は無料。「認知症かも」の段階でいい)
- この記事を、家族のだれかに転送する(自分ひとりで抱えないための、いちばん軽い一歩)
どれも、5分あればできます。
2つめについては、うちの母を物忘れ外来に連れ出したときのことを別の記事に書いています。
あのときは、たまたまうまくいった日の話です。
さっきの「無理をしない」は、誰に向けた言葉ですか。
そう聞かれたら。
みんなだよ、と答えます。
ご家族も、ご本人も、ケアする側の人も、それを支える周りの人も。
みんな、です。


