介護の仕事をしていて、ケアマネを目指したい。
そう思って調べ始めたときに、こういう言葉にぶつかることがあります。
「その職種じゃ、ケアマネは受けられないよ」
そう言われて、受験を諦めかけていませんか。
先に言ってしまいます。
半分は本当です。
でも、半分はウソです。
正確に言うと、こうです。
デイの生活相談員という職種だけでは、受験資格になりません。
ただし、介護福祉士などの法定資格に基づく業務として認められる場合があります。
私は北海道の釧路で、デイサービスで働いています。
介護の仕事は2014年から。
いまは介護職員と生活相談員を兼務していて、相談員になってからは7年目です。
そして2024年10月の第27回ケアマネ試験に合格しました。
50歳のときです。
資格を取ったのは、その翌年の2025年。
この記事では、介護の仕事をしている人がケアマネ試験の受験資格をどう満たすのかを、条文と各都道府県の要項をもとに整理します。
「デイの相談員は対象外」という話も、そのなかの一例として出てきます。
先に言っておきます。
答えは職種の名前では決まりません。
※ 資格を取ったあと、私がまだケアマネとして働いていない理由はこちらの記事に書いています。
急に「相談員やって」と言われた日
私が介護の仕事を始めたのは2014年6月。
最初は介護員でした。
2019年に転職して、その翌年のことです。
2020年4月、社内の異動で、いきなり生活相談員になりました。
急に相談員やってと言われたので驚いたし、引き継ぎもほとんどなかったので戸惑いと不安しかなかった。
これが当時の正直な気持ちです。
かっこいい志望動機なんて、ひとつもありません。
書類の様式も、家族への電話のかけ方も、手探りでした。
ケアマネという資格が視界に入ってきたのは、その少しあとのことです。
「受けられない」と知ったのは、ネットで調べたとき
受験資格を調べたのは、自分で。
ネットでです。
職場の誰かに聞いたわけでもないし、都道府県の窓口に電話したわけでもありません。
画面の中の情報だけで、「あ、私は無理なんだ」と思いました。
出てきたのは、こんな話でした。
ひとつ目。
通所介護、つまりデイサービスは、相談援助業務の対象に入っていない。
ふたつ目。
2018年度の第21回試験から受験資格が厳しくなって、介護福祉士などの法定資格を取ってから5年が必要になった。
しかもその5年は、就職した日からではなく、資格の登録日から数える。
私が介護福祉士に合格したのは2018年3月。
登録日は2018年4月6日でした。
——長い。
しょうがないので諦めて待つことにしました。
変えられないことを頑張っても仕方ないし。
そのとき自分に言ったのは、この一言です。
しょうがない。なるようになる。今できることをやるしかない。
そして実際、待っている間の3年ほどはコロナ禍でした。
ケアマネ云々言ってられないくらい忙しかったし、コロナでそんなこと考えられなかった。
周りにも、受けようという空気はありませんでした。
過去に受けたけどダメだった。時間がない、勉強が難しいから、もう受けない。
——そんな人ばっかりでした。
ひとつだけ、あとから気づいたことがあります。
旧要件で受けられる最後の試験は、2017年10月の第20回。
そのときの私は、介護歴がまだ3年4か月しかありません。
つまり、制度が変わろうが変わるまいが、どのみち受けられなかった。
私はただ、制度の境目に、ちょうど後ろにずれて立っていただけでした。

受験資格には、入口が2本あります
先に結論
・デイサービスの生活相談員は、「相談援助業務」のルートでは対象外です。ここは本当です。
・でも、介護福祉士などの法定資格を持っているなら、「法定資格」のルートで通る余地があります。
・決まるのは肩書きではなく、〈持っている資格 × 実際にやっている業務〉です。
・ただし運用は都道府県で違います。最後は必ず、自分の都道府県に確認してください。
ここからは、職種にかかわらず共通する話です。
ケアマネ試験の受験資格は、介護保険法施行規則の第113条の2で決まっています。
入口は2本立てで、合わせて通算5年以上、かつ900日以上の従事が必要です。
第1号は、法定資格ルート。
介護福祉士など21の資格を持っていて、その資格に基づく業務に従事した期間を数えます。
第2号は、相談援助業務ルート。
こちらは施設・職種が9つに限定して並べられています(厚生労働省の通知の別紙1)。
その9つが、これです。
- 特定施設入居者生活介護
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 地域密着型介護老人福祉施設
- 特別養護老人ホームの生活相談員
- 介護老人保健施設の支援相談員
- 介護予防特定施設入居者生活介護の生活相談員
- 計画相談支援の相談支援専門員
- 障害児相談支援の相談支援専門員
- 生活困窮者自立相談支援事業の主任相談支援員
見てのとおり、通所介護は一つも入っていません。
だから「デイの相談員は第2号では対象外」というのは、本当です。
まず、自分がどちらのルートかを確かめる
介護職としてケアマネを目指すなら、最初にやることは、自分がどちらのルートに該当するかを確認することです。
ここを取り違えると、何年数えても届きません。
介護福祉士を持って介護の仕事をしている人は、第1号です。
デイでも特養でも訪問でも、施設の種類は問いません。
介護福祉士の登録日から数えて、5年かつ900日。それだけです。
ここで気をつけたいのが、資格を持たずに介護の仕事をしている人です。
北海道の試験案内には、こう書かれています。
介護職員実務者研修、旧ホームヘルパー養成研修1・2級課程、旧介護職員基礎研修の資格も同様に該当しません
初任者研修や実務者研修だけでは、受験資格になりません。
昔は「無資格でも介護の実務10年」で受けられる道がありましたが、2018年度の改正でなくなりました。
つまり資格のない介護職員にとっては、ケアマネの前に、まず介護福祉士ということになります。
遠回りに見えますが、これがいまの最短ルートです。
9つに入らない職種でも、あきらめなくていい理由
でも、入口はもう一本あります。
第1号です。
介護福祉士を持っていて、その資格に基づく業務として働いているなら、そちらで通る余地があるということ。
——あ、そうか。
判定されているのは、「生活相談員」という肩書きではありません。
〈持っている資格〉と〈実際にやっている業務〉の組み合わせです。
よくある誤解:「デイサービスの生活相談員は対象外」
この考え方が、いちばん誤解を生んでいるところに効きます。
通所介護の生活相談員は、第2号の9項目に入っていません。
だから「第2号では対象外」は本当です。
でも、その人が介護福祉士を持っていて、その資格に基づく業務をしているなら、第1号で数えられる余地がある。
実際、大阪府が出している第29回試験のQ&Aには、この立場からの質問が載っています。
問8。
「介護福祉士の資格を有し、デイサービスの生活相談員として従事していますが、受験資格はありますか」
回答は、こうです。
生活相談員の資格要件は、社会福祉法第19条第1項のいずれかに該当する者及びこれらと同等以上の能力を有すると認められる者とされています。大阪府においては、介護福祉士を生活相談員の資格要件に定めているため、介護福祉士資格に基づく業務として受験資格はあります。
大事なのは「大阪府においては」という一言です。
生活相談員の資格要件は、都道府県が定めています。
だから、介護福祉士を資格要件に入れている県と、そうでない県が出てくる。
——ここが、都道府県で答えが変わる正体です。
私の場合はこうでした。
受験のときに出したのは、今の職場1か所ぶんの実務経験証明書だけ。
申請に使った資格は、介護福祉士です。
そして数えた5年間、私は介護職員と生活相談員を兼務していました。
相談員の専従ではありません。
証明書は、職場の総務の方と一緒に確認しました。
ただ、正直に書くと、中身の判断は総務の方にお任せしています。
総務の方が言うのだから間違いない。
そう信用して、手続きをしました。
だから私は、いまも自分のどの業務がどう数えられて受験資格になったのか、条文に当てて説明することはできません。
それでも、通りました。
だからこそ言えることがあります。
自分の受験資格を、自分の職種名だけで判断しないでください。
そして、一人で調べて結論を出さないでください。
私が最初にやった失敗がそれで、二回目にうまくいったのは、職場の総務の方と一緒に確認したからです。
詳しい人と一緒に見る。それだけで、だいぶ違います。
だから、自分の都道府県に確認してください
対象になる9つの項目そのものは、全国どこでも同じです。
差が出るのは、そのあとの運用のほうです。
同じ制度なのに、都道府県ごとに扱いが違うところが実際にあります。
育児休業の扱いが、県で逆になっている
大阪府のQ&Aには、こう書かれています。
育児休業、介護休業、病気休業等の期間については、業務期間の対象とはなりません。ただし、産前産後休業は、業務期間の算入対象となります
つまり大阪府では、産前産後の休業は期間に入るけれど、育児休業は入らない。
いっぽうで北海道は、産休も育休も業務期間には算入できる扱いになっています。
ただし、従事日数のほうには入りません。
同じ「育休」という言葉なのに、県をまたぐと答えが変わる。
出産や育児で職場を離れた期間がある人にとっては、けっこう大きな違いです。
証明書の枚数も違う
同じ事業所で、途中から職種が変わった人もいると思います。
介護職員から生活相談員になった、みたいなケースです。
北海道の試験案内には、同じ法人の中で職種が変わった人向けの記載例があります。
1枚の証明書の中で、従事期間と職種を①②に分けて書く形です。
大阪府は、そうではありません。
同一法人であっても施設又は事業所等勤務先が異なる場合や業務内容が変更になった場合は、それぞれの業務について別々の実務経験証明書が必要です
同じ「介護職員から生活相談員になった」でも、片方は1枚、片方は2枚。
書類の準備にかかる手間が、そもそも違うわけです。
「ネットで調べて分かった気になる」がいちばん危ない
これ、私がやったことです。
自分で検索して、「うちの職種は無理だ」と結論を出して、そこで止まりました。
聞く先は、都道府県の試験担当窓口です。
毎年出る試験案内に、電話番号が載っています。
そこに電話して、自分の資格と自分の職歴を伝えて聞く。
それがいちばん早くて、いちばん確実です。
なお、令和8年度の北海道の申し込みは、6月11日で締め切られています。
だからこの記事は、今年に間に合わせる話ではありません。
来年に向けて、いまのうちに自分の受験資格を確かめておく。
そういう話として読んでもらえたらと思います。
数え方で、つまずきやすいところ
窓口に電話する前に押さえておくと、話がぐっと早くなる点が4つあります。
1. 起算は「登録日」から
大阪府のQ&Aの原文です。
国家資格等に基づく業務とは、国家資格等の免許証又は登録証に記載された登録日(交付日)以降に従事する業務です。したがって登録日以前に従事した期間は含まれません
資格を取る前に何年働いていても、その期間は1日も入りません。
数え始めるのは、あくまで登録日から。
ここを勘違いしていると、計算が丸ごとずれます。
2. 5年以上、かつ900日以上
期間の条件だけではなく、日数の条件もあります。
北海道の試験案内では、5年は1,825日と書かれています。
期間が5年を超えていても、900日に届いていなければ足りません。
パートなどで1日の勤務時間が短い場合も、出勤していれば1日として数えます。
短時間勤務だから不利、というわけではないです。
3. 第1号と第2号は合算できる。職場をまたいでもいい
大阪府のQ&Aでは、複数の資格に基づく業務に登録日以降従事していれば通算できる、とされています。
通算して5年かつ900日以上あれば、受験資格があるという考え方です。
一つの職場で足りていなくても、足し算で届く人がいます。
自分の職歴を、資格の登録日を境にして並べ直してみると見えてきます。
4. 証明書は、全部の職歴を出す必要はない
北海道の試験案内には、受験資格を満たす範囲で提出すればよい、と書かれています。
すべての実務経験を申告する必要はなく、1か所の証明書1枚でも構わない、と。
これ、地味だけど大きい話です。
前の職場と気まずく別れて、頼みに行きたくない人がいます。
そういう人にとっては、救いになる一文だと思います。
私も、今の職場1か所ぶんだけで出しました。
もうひとつ。
一度でも受験していれば、次からは受験票や合否通知の原本で証明書のかわりにできます(平成30年度以降のものに限ります)。
落ちた経験のある人ほど、前の職場に頼まなくて済むということです。
五年待って、いま思っていること
結果として、私は5年待ちました。
そのうち3年くらいは、コロナ禍と丸かぶりです。
——正直、ケアマネ云々を言ってられないくらい忙しかった。
現場を回すだけで精一杯で、試験のことを考える余裕なんてなかったです。
周りには「過去に受けたけどダメだった」という人がたくさんいました。
時間がない、勉強が難しい、だからもう受けない。
そういう話を、何度も聞きました。
でも、いま振り返ると、あの5年は空白ではなかったです。
相談員として現場で覚えたことが、そのまま問題文の中に出てきました。
5年ぶんの知識と経験があったから、一回で受かったんだと思っています。
そのときの勉強のやり方は働きながらケアマネ試験に独学で合格した話に、合格したあとに待っていた実務研修のことは実務研修87時間のリアルに書きました。
同じ立場の人に言いたいことは、3つだけです。
習慣化。地道。可視化。
毎日の決まった時間に少しだけやる。
派手なやり方を探さない。
やった量が目に見えるようにしておく。
私はこれで進みました。
楽しかったし、途中で積み上がる成功体験が、次の一歩を押してくれました。
地道なやり方が、たぶん自分には向いていたんだと思います。
受けられないと思い込んで止まっていた人間ですが、これだけは書いておきたいです。
物事を始めるに遅いはない。今日が一番若い。
まずは、自分の都道府県の窓口に電話するところから。
それだけで、止まっていたものが動き出すことがあります。
受験資格が確認できたら、次は勉強です。直前期の過ごし方はケアマネ試験・直前期の一か月|26点から始めて過去問を50回に書きました。


