介護の現場で見た、お金の現実。介護職がFP3級を目指す本当の理由

介護の現場で見たお金の現実|だから私はFP3級を目指した 介護保険とお金

冬なのに、暖房の入っていない部屋がありました。

デイサービスの送迎で、毎日いろんなお宅の玄関を開けます。

整然とした広いリビング。壁紙が剥がれかけた薄暗い部屋。開けた瞬間に、その方の暮らしが少しだけ見えてしまう。

ご家族から「施設に入れるしかないですかね」と相談されるたび、私はいつも、もどかしさを感じていました。

高額介護サービス費、負担限度額認定、生活保護の申請。制度の名前なら、もちろん知っています。

でも「その人の家計にとって、実際いくらの話なのか」を数字で示せるかというと、まったく自信がありませんでした。

✏️ この記事を書いた人:わらびもち
北海道・釧路のデイサービスで2014年から介護職員と生活相談員を兼務。介護福祉士・ケアマネジャー資格保有。実母の介護も経験しており、「介護のプロ」と「家族介護者」の両側面から発信しています。記事の内容は個人の経験・見解に基づくものです。医療・介護の具体的な判断は必ず専門家にご相談ください。

📌 この記事でわかること

  • 介護現場で見たお金のリアル
  • 介護職がFP3級を目指した本当の理由
  • 50代から学ぶお金の知識の重要性

介護の現場で見たお金の現実。介護職として働く中で感じた将来への不安と、FP3級を目指そうと思った本当の理由を実体験からお話しします。

「老後の不安」という言葉は、テレビや雑誌でよく見かけます。

でも、わたしが介護の仕事で目にするのは、「不安」という言葉ではとても収まらない、リアルな生活の困窮です。


送迎車の窓から見える、それぞれの暮らし

デイサービスの送迎で、毎日いろんなお宅にお迎えに行きます。

冒頭に書いたような光景は、めずらしいことではありません。玄関を開けた瞬間に見えるものは、お宅によってまるで違います。

担当者会議では実際に家の中に上がって、ご本人を交えて話し合いをします。そのとき、言葉以上に多くのことが見えてくる。

貧困の差は、本当に歴然としています。

年金額によって介護保険の自己負担割合も変わります。だから、ご利用者の経済状況はある程度把握しているつもりでした。でも、数字じゃわからないことが、現場にはたくさんある。


忘れられない、いくつかの顔

生活保護を受けながら、それでも「施設に迷惑をかけたくない」と遠慮がちに過ごしているおじいさん。

家族との関係が完全に壊れて、身寄りのないまま施設で暮らしているおばあさん。面会に来る人は、誰もいません。

気の優しいあるおばあさん。「子どもたちには苦労させたくないから」と話してくれるけれど、手元にはほとんどお金が残っていない様子だった。

既往症の影響で金銭管理がまったくできなくなった方もいます。その方は今、後見人の弁護士さんが通帳を管理しています。ご本人に悪意は何もない。ただ、病気がそうさせてしまった。

そして——かつて市内にいくつもの建物を手がけた、腕利きの建築士の男性。30代で独立し、順風満帆だった。でも、クライアントとのトラブルで負債を抱え、最終的に自己破産。この方は、私のケアマネ合格に大きく関わった方でもあります。その話はケアマネ試験・直前期の一か月に書きました。

その方が昔話をしてくれるとき、誇りと悔しさが入り混じったような表情をされます。

お金がある人が安心なわけでも、稼いできた人が報われるわけでも、ない。

直接言葉にする方はほとんどいません。でも、生活の端々から、静かに滲み出てくる。わたしは毎日、そういう場所に立っています。


「知らない」ことが、人の選択肢を奪う

ご家族から「施設に入れるしかないですかね」と相談を受けるたびに、わたしは思います。

高額介護サービス費、負担限度額認定、生活保護の申請。制度の名前は言えても、その人の家計にとっていくらの話になるのかは示せませんでした。

「専門家に任せてください」と言うことはできる。でも、目の前で困っているその人に、今すぐ答えられる言葉を持ちたかった。

そのもどかしさが、ずっと積み重なっていました。


FPを目指したのは、YouTubeがきっかけだった

転機は、ふとしたきっかけで見始めたYouTubeでした。

リベラルアーツ大学、フェルミ漫画大学。お金の話をわかりやすく、時にユーモラスに解説してくれる動画に、気づいたらどっぷりはまっていました。

「なんで学校では教えてくれなかったんだろう」と、何度も思いました。

そこから本にも手が伸びて、『ダイ・ウィズ・ゼロ』『金持ち父さん貧乏父さん』を読みました。お金に対する考え方が、じわじわと変わっていきました。

資産を増やすとか、投資で儲けるとか、そういう話ではなくて——お金のことをちゃんと自分の言葉で考えられるようになりたい、そう思うようになったんです。


まず、自分のマネーリテラシーを上げたかった

FP3級を目指したのは、仕事のためだけではありません。むしろ最初の動機は、もっと個人的なものでした。

自分と家族を守りたい。「よくわからないから」と目を背けてきたお金のことを、ちゃんと向き合いたい。

介護の現場で出会ってきたあの人たちのことが、頭の片隅にあったのも確かです。どれだけ稼いでいても、どれだけ真面目に生きてきても、知識がなければ人生は思わぬ方向に転がることがある。

逆に言えば、知っているだけで、守れるものがある。

そう信じて、テキストをめくり続けました。

そして2026年7月9日、FP3級を受験してきました。

結果は、2026年8月18日に発表。合格していました。

学科39点、実技65点。どちらも合格ラインぎりぎりです。

発表の日まで、生きた心地がしませんでした(笑)

……でも、点数よりうれしかったのは別のことでした。

「高額介護サービス費が」と言われたときに、頭の中に地図がある。

それだけで、話の聞き方が変わりました。

資格を取ったからといって、あの方の悔しさが消えるわけではありません。

それでも次に「施設に入れるしかないですかね」と聞かれたとき、前より少しだけ長く、一緒に考えられる気がしています。


親のお金まわりで実際につまずいた話は、こちらに書きました。→ 【名義預金に注意】親の財産管理で失敗しない相続・暦年贈与の基本

介護職の給料が実際どう動いているかは、明細を並べて数字で書きました。→ 「介護職の給料が2.03%上がった」と言われて、実際の明細8か月分を並べてみた

タイトルとURLをコピーしました